霊枢・歳露論に以下のような条文があります。
歳多賊風邪気寒温不和則民多病
(歳に賊風の邪気多く寒温和さざれば、則ち民は多く病む)
季節に調和しない気候、つまり寒いはずの冬に暖かければ病気が流行る、と言っています。
この冬は記録的な暖冬でした。中国の武漢でも12月半ばまでなかなか気温が下がらなかったとのこと。東洋医学的には疫病が流行る土壌があったと言えるようです。
今、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、社会全体でできる限りの手立てが取られ、一人ひとりが身を守るために意識を高め、なんとかこの難局を乗り切るべく緊張感のある日々が続いています。連日報道されるウイルスの威力のしぶとさにも気が滅入ります。
そんな中、先日NHKのニュースで、工場の操業などが停止している武漢上空の大気汚染物質の濃度が、去年の同じ時期と比べて大幅に低下していた、と言っていました。もちろん一時的なことでしょうが、良いこともあるんだと少し救われたような気がしました。
今のところ収束の道筋は見えていませんが、3/11付の朝日新聞に「多くの感染症は人類の間に広がるにつれて、潜伏期間が長期化し、弱毒化する傾向があります。病原体のウイルスや細菌にとって人間は大切な宿主。宿主の死は自らの死を意味する。病原体の方でも人間との共生を目指す方向に進化していくのです」「世界中に広がっていく中で弱毒化が進み、長期的には風邪のようなありふれた病気の一つとなっていく可能性があります」(長崎大熱帯医学研究所教授・山本太郎氏)とありました。その上で、感染防止策をとれば「新たな宿主を見つけづらい状況」となることで「『宿主を大切にする』弱毒の病原体が有利」となり「病原体の弱毒化効果も期待できる」そうです。さらに「集団内で一定以上の割合の人が免疫を獲得すれば流行は終わる。今、目指すべきことは、被害を最小限に抑えつつ、私たち人類が集団としての免疫を獲得することです」とのことでした。
なんとか折り合いをつけるために、今しばらくの辛抱です。