先日、ずっと通っていただいている80代の患者さんから、「先生、動けない・・・」と電話があり、驚いて飛んで行きました。幸いにも少し落ち着いた後のようで、布団に座って迎えてくださいました。
朝、残り物を少し口にした後、冷たいバナナを食べた途端に胃の具合が悪くなり、トイレで吐いて排尿した後、失神してしまった、頭をゴツンとぶつけたのは覚えていて、失神していたのは多分数秒で、気がつくとまわりはビショビショで、それには臭いはなかったのでおそらく汗だろう、とお話ししてくださいました。
以前にも同じようなことがあり、その後病院へ行ったら熱中症だろうと言われた、とのことでした。
お話を聞くうちに次第に顔に生気が戻り、1時間ほどして「もう大丈夫」と言われました。
お話の途中で「大量の水はたぶん汗」と聞き、安心しました。なぜなら、黄帝内経素問・霊枢といった古典医書に、「汗をかく」ことは治癒に向かうために必要不可欠なことである、との記載が繰り返し見られるからです。
◆素問・熱論篇第三十一
(傷寒して)其れ三日に満たざる者は、汗して已(い)ゆべし。
◆霊枢・寒熱病第二十一
(肌、寒熱する者は)・・・足の太陰を補い、以て其の汗を出だせ。
1年程前から、古典医書を読む勉強会に参加しています。
黄帝内経素問・霊枢は約二千年前にまとめられ、その後何度も編纂され整理されて、今も治療の拠り所となっているものです。
臨床に必要な基礎的な理論から実践的な記述、また四季に応じた養生や心の在り方など、とても納得できる部分もあれば、現代とはかけ離れた生活からの病態など、ピンとこない部分もあったりします。
このところずっと読み進めてきた熱病に関する各篇も、これは死症である、などと書いてあったりして、正直自分に役に立つのか疑問でした。
それが今回の一件で、急に現実味のある生きた内容に思えてきて、理解できるかどうかは自分の捉え方次第なんだと気がつきました。
大切なことに気がつかせていただいた患者さんと、古典を学ぶ機会を与えてくださった先生方に感謝しつつ、少しずつでも古典を読み進めて臨床に活かしていければと思います。